(1)『人間の本性を考える 心は「空白の石版」か』上中下(スティーブン・ピンカー著、山下篤子訳)
(2)『嘘つき大統領のデタラメ経済』(ポール・クルーグマン著、三上義一訳)
(3)『だれが「音楽」を殺すのか?』(津田大介著)
(1)は従来のジェンダー論や教育論の根底にある「人間は何にでもなれる」というまちがった想定を批判しつくした驚愕(きょうがく)の書。内容の広がりとバッシングを恐れぬ知的勇気は感涙もので、しかも読んで楽しい神業。(2)はブッシュ政権の問題を、一介の経済学教授が公開情報と冷静な分析だけで指摘し続けた名コラム集。分析欠如の「スクープ」合戦に堕した現代マスコミ批判としても強力。また、ネットと著作権まわりの動きが活発だった今年のまとめとして、(3)は優秀。
他に、確率で人間や社会の本質に迫る小島寛之『確率的発想法』、未来の社会形態や倫理体系を奔放に展開してSFの面目躍如たるイーガン『万物理論』、社会学と投資についておふざけに高度な内容をつめこんだマッツァリーノ『反社会学講座』と山本一郎『投資情報のカラクリ』も、今年の大きな収穫。