統計として示される数字の数々。それらは、一見、無表情な、人それぞれの物語の詳細を省いた記号のようにも見える。だが、本書に集められた多くの数字は、圧倒的なリアリティーをもって、アフリカという現代世界の難問を突きつける。
たとえば、1103万5千人という数字。これは、2001年現在、サハラ以南のアフリカで、親をエイズでなくした孤児の数だ。4800万は、アフリカで学校に行かずに労働に従事する14歳以下の子どもの人数であり、同年齢層の29%にあたる。さらにアフリカには1千万人を超えるストリート・チルドレンがいて、奴隷として「輸出」される子どもは最低でも毎年20万人に上る。ほかにも、性的虐待に遭う少女の数や、年の端もいかない少年兵の数が紹介される。
これらの数字の裏側に、子どもたちを取り巻くどのような日常があるのか。子どもに不幸をしわ寄せてしまう、グローバル化した世界のどこに問題があるのか。子どもを通して表れるアフリカ問題。それが、偶然にも豊かな社会に生まれ、暮らすことのできる私たちの日常とどのように結びついているのか。そこに目を向けながら、本書は「無関心による大量虐殺」といわれるアフリカの惨状を、数字を裏づける豊富なエピソードを通じて詳(つまび)らかにする。
チョコレートの原料、カカオの世界最大の輸出国、コートジボワールの農園では、1万5千人の子どもが奴隷として働き、生産コストを下げている。だから先進国では簡単に手に入るチョコレートには、アフリカの子どもたちの汗と血と涙が混じっている、といわれる。本書を読むまで知らなかった事実だ。
最後に著者はいう。「アフリカに対して何をすべきか」の前に、「何をすべきではないか」をまず考えるべきだ、と。見ようが見まいが、知らず知らずのうちに私たちがしている何かが、アフリカの子どもたちの問題とどこかでつながっている。とすれば、少しでも正確に、その事実を知るところから始めるしかない。本書がその懸け橋となる。