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書評

都市美 都市景観施策の源流とその展開 [著]西村幸夫編

[掲載]2005年07月24日
[評者]松原隆一郎

 13人の専門研究者が、欧米8カ国と日本について都市の美観政策の系譜をたどった論文集である。こうした形の企画は学術関係では無数にあり、一般読者が通読して楽しめるものは少ない。ところが本書は厳密な論考の集積でありながら、出版じたいに極めて戦略的な意図が込められている。それに心惹(ひ)かれる読者ならば、ページのあちこちで発見と驚きに出合うだろう。

 近年我が国では、巨大マンション建設などに反対する訴訟がいくつも起こされている。だが財産権が憲法で保障されている以上、建築基準法などに違反しない建築物は規制しづらい。そこで昨年末に「景観法」が施行されたのだが、この法も無条件には運用されないはずだ。建築物の高さや色彩を制限しても財産権を侵さないと言い張るには、特定の景観が美しく良きものであり、「公共の福祉」を増進すると論証しなければならないからだ。だが、価値観については個人の自由に任すのが当然とされる昨今、そんなことが可能だろうか? 実際、「景観保全」の立場に対して「特定の美意識を押しつけるファッショだ」と、お決まりの反応を示す人は多い。

 そこで本書は、財産権や個人主義、自由主義といった考え方を産み落とした当の欧米諸国が、それらの概念と両立するよう知恵を絞り規制をかけていく有り様を、各国の歴史や地域性に即して詳述してゆく。イタリアやドイツなど全体主義が跋扈(ばっこ)し戦後に徹底的に反省された国々でも、現在ゾーニングや条例を駆使することで「都市美」が実現されている。事情は各国まちまちだが、美意識を国が上から押しつけるのでなく、地域からボトムアップしていく点は共通している。景観規制が資産価値を高めるという傾向もあるらしい。景観法にとって援護射撃となる事例の数々が挙げられているのだ。

 摩天楼が林立した19世紀末のアメリカで、採光とテナントの奪い合いに悲鳴を上げた不動産関係者が高さ規制を望むに至ったという逸話は、今後の日本を考える上でも興味深い。脚注と図版も満載で、楽しめる。



関連情報

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    書籍詳細

    表紙画像

    都市美—都市景観施策の源流とその展開

    • 著者: 西村 幸夫
    • 出版社: 学芸出版社
    • ISBN: 476152362X
    • 価格: ¥ 2,940

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