ロシアのプーチン大統領が就任して3年目の厳冬、イルクーツクのアパートで老人が死んだ。暖房用パイプの老朽化が原因だった。アパートの住人は彼の凍死体を冷たい床から金てこではがさねばならなかった。
退役軍人で勲章や国家年金を受けていたが、国家から本当に温かい配慮を受けていたとは言えない。
彼の姓はイワノフ。ロシアで最も多い姓だ。プーチン政権下で起きている「日常的な死」の典型だと、著者は言いたいのだろう。
オリジナルのロシア語版は本国では出版されていない。それもそのはずだ。著者はプーチン体制の不条理を告発しつづける女性ジャーナリスト。本書では軍隊の堕落、マフィアの増長、法曹界・政界の根深い腐敗を市民の側から暴き出す。
北オセチアの学校占拠事件の際、現地へ向かった著者は機上で何者かに毒を盛られ、一時重体に陥った。
彼女のペンを恐れる権力側のうろたえぶりを伝えるエピソードといえる。