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書評

ダンボールハウス [著]長嶋千聡

[掲載]2005年10月23日
[評者]鷲田清一

 路上生活者のハウスの、2年9か月をかけた調査記録である。グラフや数字ではなく、手書きのスケッチと図面と文章で、住人の住まい方、建築仕様が描かれる。生活費0円に近い暮らしをしている人びと、延べ70件の記録だ。

 はじめは「要注意人物」なので、うろちょろしてまず顔を覚えてもらい、豚足を肴(さかな)に酒を酌み交わしもしながら、1週間から1か月かけて訪問許可をもらう。

 工法には、テント型、小屋型、寝袋型、ツーバイフォー型、モノ構造体型、無セキツイ型などがある。意外な居住形態として、寮型、賃貸型、ルームシェアもある。圧巻は、十数台の冷蔵庫で囲われ、その中がきれいに収納庫になっている繁華街近くのハウスだ。

 調査の過程で、自治体によって解体・撤去されるさまをつぶさに目撃する。建物が一瞬にして「ゴミの山」にしか見えなくなる。そこではじめて気づく。あれらのハウスは、「一度ゴミとして捨てられた後に集められ、彼らによって蘇生させられたモノ」だったのだ、と。

 これらのハウスは、ふつうの家族住宅のように、社会との圧力関係のなかでその輪郭が決まるのではない。枝や茎を集めてきて、それにじぶんの胸を圧(お)しつけ成形する鳥のように、その形はいわば内部から押し寄せてくる。所有され、購入され、賃貸される建築とは異なって、室内が蒸せばその場でシートを切って窓を作るというようにたえず変化するダンボールハウスには、内部から噴きだすような生身の息づかいがある。もちろんそれは、「つねに変化し続けなければ、住まい続けることのできない路上生活の過酷さの裏返し」でもあるのだが。

 コンビニや公共設備など、都市環境に寄生して生きる単身者の都市生活は、路上生活者のそれに構造的に近接してきている。だからこそダンボールハウスの建築学的分析だったのだ。

 「蘇生」という言葉のあと、「彼女を取材対象者、つまりホームレスのおじさんに奪われた事件(ようするに失恋だ)は、けっこうキツかった」という一文にふれると、せつなさは一気に高ぶる。



関連情報

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    書籍詳細

    表紙画像

    ダンボールハウス

    • 著者: 長嶋 千聡
    • 出版社: ポプラ社
    • ISBN: 4591088308
    • 価格: ¥ 1,365

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