中国の歴史では時の権力を批判し、風刺する言説に対する弾圧、すなわち「文字獄」と呼ばれる暗黒の時代が繰り返されてきた。
文化大革命も自己と異なる意見を敵性あるいは悪と見なす毛沢東が引き起こした、現代の文字獄だった。
その文革期には独特の語彙(ごい)や言い回しが流布したが、この文革言語の政治的出自や影響力を、それを用いた毛沢東、林彪ら政治指導者や「四人組」ら左派のイデオローグ、それに紅衛兵各層の代表的言説から読み解いた大著である。
扇動力に満ちみちた文革言語は多くの若者を鼓舞したが、逆に人の「心を鉛のように」し、「骨格に刃物を刻みつける」打撃を与え、死地に追いやりもした。
共産党は81年に「党と国家と人民に大きな災難をもたらした内乱」と文革を総括し、今は「徹底否定」が国是となった。だが文革言語の抑圧性だけでなく解放性にも着目する筆者は、功罪両面から光を当てた文革の再検証が必要だと説く。