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[掲載]2006年01月15日[評者]佐柄木俊郎
「そろそろ回想記を」と持ちかけられて生まれた本だそうだ。実年齢を感じさせない著者も、すでに古稀(こき)と聞けば、得心が行く。とはいえ、在日二世の歌手の歌からとった表題には「まだまだ」の気持ちがにじむ。「枯れ」とは無縁、筆先はシャープである。
「自分は媒体。強いて書くとすれば出会ってきた他人様のことしかない」という境地で綴(つづ)った、半世紀にわたる交友録ないし取材の覚書だ。新聞記者、雑誌編集者、TVキャスターと多様な経験を重ねただけに、対象の顔ぶれは三木武夫から美空ひばりまで、左右、硬軟、内外とりまぜて、幅の広さが半端ではない。
ただし、政治家諸公とのあれこれより、文化人とのエピソードの方が、格段に深くて面白い。オペラなど音楽全般から、陶芸、芝居、映画、麻雀(マージャン)までといった趣味、嗜好(しこう)の自在さ。それを嫌みなく読ませる巧みさ。おしゃべりより、やはり文筆の人だ。
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