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書評

マイク・マンスフィールド 上・下 [著]ドン・オーバードーファー

[掲載]2006年02月19日
[評者]中西寛

 偶像破壊の時代である。メディアはきまぐれにカリスマの仮面を張りつけ、やがてはぎ取る。そこに真の敬意といったものが入り込む余地はほとんどなく、ことに、人格者として尊敬される政治家といった存在は既に絶滅したかと思われる。

 駐日アメリカ大使を77年から88年まで務め、「世界に比類なき二国間関係」という「殺し文句」を発明して、深刻化する日米摩擦の時代を乗り切ったマイク・マンスフィールドは、この珍種の最後の一人であったかも知れない。本書は、アジアの国際政治を専門とする実力派のジャーナリストが深い敬愛の念を込めてその一生を追った伝記である。

 01年に行われた彼の葬儀の記述から入り、生い立ちを描いた最初の3章はとりわけ感動的である。貧しいアイルランド移民の子として生まれた彼は母を失い、中学卒業前に家出し、海軍、陸軍、海兵隊を遍歴した。その後、鉱夫として暮らしていた彼に道を開いたのは、高校教師の妻との出会いだった。妻の強い勧めで大学を終えた彼は大学教授からやがて政治を志し、20世紀アメリカ議会政治の中心人物への道を歩むことになる。しかし彼は生涯、故郷モンタナの庶民としての出自と海兵隊二等兵としての経歴への誇り、そして妻との愛を保ち続けた。

 53年に上院議員となってから77年に引退するまで、彼はアジアに詳しい「保守リベラル」の代表格として政権を支え、時に批判した。もちろん著者はジャーナリストとして真実を追う。彼が駆け出しの政治家の頃には嘘(うそ)をついて自らのアジア経験を大きく見せていたことを明らかにし、また、50年代に南ベトナムでゴ・ジン・ジエム政権擁立を後押しし、皮肉にも後に彼が政権と対立して反対したベトナム戦争への道を開いてしまったと評価する。

 それでも著者のこの人物への畏敬(いけい)は揺るがない。完璧(かんぺき)な政治家、いや人間などあるはずもなく、欠点を含んでなお偉大さは存しうる。「マイク」の死の直前に交わされた短い別れの挨拶(あいさつ)が、著者の思いを伝えて温かい。


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    書籍詳細

    表紙画像

    マイク・マンスフィールド—米国の良心を守った政治家の生涯(上)

    • 著者: ドン・オーバードーファー
    • 出版社: 共同通信社
    • ISBN: 4764105659
    • 価格: ¥ 2,520

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    書籍詳細

    表紙画像

    マイク・マンスフィールド—米国の良心を守った政治家の生涯(下)

    • 著者: ドン・オーバードーファー・長賀 一哉
    • 出版社: 共同通信社
    • ISBN: 4764105667
    • 価格: ¥ 2,520

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