01年の米同時多発テロの最終謀議は前年にマレーシアの首都クアラルンプールのマンションで行われた。ここからも国際テロ組織アルカイダのアジアへの浸透ぶりがうかがえる。
著者は「現場主義」を信条とする東南アジア研究の国際政治学者。テロリストがリクルートされるイスラム学校やヤシ林に隠れるアジトにも足を運び、「現場の匂(にお)いをかぎ、空気にふれ、そこから物事を考え」たことから本書は生まれた。
ビンラディンが親族や腹心を東南アジアに送り込み、アルカイダとジェマー・イスラミア(JI)、アブ・サヤフ(ASG)などイスラム系過激派組織と人脈や金脈、情報で結びつく経緯の分析には豊富な現地情報が盛り込まれている。
著者はイスラム社会に地縁、血縁の根を張る闇の送金システム「ハワラ」の巧妙な実態にも触れ、テロ資金源の根絶は「きわめて困難」だとし、テロとの戦いは「続くことを覚悟しなければならない」と結ぶ。