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[掲載]2006年03月12日[評者]巽孝之
木造家屋の残る下町に佇(たたず)む著者近影という、妙に懐古趣味的なカバーに惹(ひ)かれて気軽に読み出したら、止まらなくなった。いま芸人としても俳優としても脂の乗っている劇団ひとり初の著作は、社会の落ちこぼれたちを主人公にした五編から成る連作短編集。
ホームレス志願のサラリーマンが公園デビューを果たし共同体に溶け込む一方、この道二〇年という長老モーゼのもとには大成功した息子の迎えがやってくる「道草」、借金まみれの男が自殺をやめて振り込め詐欺に走るも、相手には相手の事情があったという「Over run」、駆け出しお笑い芸人のカップルのなれそめとステージを絶妙な視点の切り替えで描き出す実質上の表題作「鳴き砂を歩く犬」など、いずれも抜群の構成力だ。抱腹絶倒のアイドル“ドロ子”まできっちり性格造形し、過剰なスターシステムまで構築ずみ。長編ではさらに飛躍を遂げることが予想される、大型新人の登場である。
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