本好きのための情報誌『彷書月刊』で8年間にわたって連載中の人気コラムが分厚い一冊になった。
書評を含む本回りのライターである著者は「均一小僧」を自称する。古書店の店頭には「なんでも100円」といった安価な本が並ぶが、この均一コーナーでまず足を止めて入念に背表紙を眺め、意外な宝物をつり上げることを何よりの喜びとするからである。
その根っからの本好きが、題名の通り足の向くまま気の向くまま、全国を股に掛けて三百数十軒の古書店を足で歩いた探訪記である。
単に店構えや掘り出したものの紹介にとどまらず、個性あふれる店主との対話や、店を探し当てるまでの町歩きでの体験談も、これまた愉快。
そして「駅前にあったあの店が」といった名店が惜しまれて看板を下ろし、目録やネット活用の新しい売り方が増え、カフェや酒場と一体になったニューウエーブ店の出現といった業界事情もさりげなく紹介されている。
ユニークなのは本書の随所にある書き込みだろう。以前の持ち主の書き込み跡は古書では値引き材料だが、数年前に訪ねた店がその後廃業したといった有用情報が、手書きで欄外に挿入されているのは親切で、面白い試みだ。
この古本の虫を抱える家族のエピソードにも微苦笑を禁じ得ない。旅行にでかけても主目的が古書店探訪であることは妻もとうにあきらめているが、ある日、東京の下町の古書店で、まだ小学生の娘が父親が目下夢中になっている外国マンガのシリーズ本を見つける。
「でかしたぞ、娘!」と父親は頭をなでたが、さて困った。どの巻を持ってて、どの巻がないかわからない。すると娘が「それはある、ない、ある、ある……」と楽々選び出し、家に帰るとすべて正解。教えずとも子は育つ。
散歩の極意というか醍醐(だいご)味は何も目的を持たずにぶらつくことだろうが、この1冊を持参して春の街に繰り出すのも悪くない。古書店で収穫を得て、喫茶店で一服するのもまた楽しからずやだ。