「二〇〇四年までに、アメリカの映画はおおむね世界を征服した」と著者は書く。欧州と日本を合わせた興行収益に占めるハリウッド映画の割合は、すでに八割。近年、仏の「赤ちゃんに乾杯!」「ニキータ」や日本の「リング」など、他国製映画のリメイクも盛んだが、「世界の市場をつかむのには、米人俳優が登場する、アメリカン・スタイルの映画が必要だということが明白になった」とも。
パラマウント、ユニバーサル、ワーナー・ブラザーズなどのスタジオを創業したのは、いずれも貧しいユダヤ系東欧人移民だ。エジソンの特許侵害の追及を逃れて西海岸に本拠を移したのが「映画の都」の誕生につながった。いまや「世界のアメリカ化」の象徴ともいえるハリウッドのその後の変遷と、経費や収益など、映画ビジネスの裏側を克明に明かしてなかなかに刺激的である。
何より、ハリウッド映画の大部分が赤字であることに驚く。メジャー六社が〇三年に封切った映画の配給経費百八十億ドルに対し、世界中で回収した入場料収入は六十四億ドル。全世界の収益のうち劇場の占めるシェアは一八%で、映画づくりはいまや、ビデオやDVDとテレビの放映権料に支えられている。それらを含めて収益のあがる映画は、全作品の五%以下しかない。
一流スターの出演料が八桁(けた)(一千万ドル)を超えるなど、製作経費や宣伝費の高騰が背景だ。ところが「ハリー・ポッター」や「スター・ウォーズ」シリーズ、「スパイダーマン」のように、さほどのスターは出演しないが、キャラクター商品やDVDを含め、一本で十億ドル以上を稼ぐ超ヒット作がまれにある。こうした「子ども向け」映画が、スタジオ全体の財政を何年間も支え、「大人の映画」づくりや映画人たちの文化を支えているとの指摘は、興味深い。
「新生ハリウッドを造った男たち」の一人として、ソニーの故盛田昭夫氏に相当のページ数を割く。松下や東芝といった企業名も再三登場するし、海外の配給市場として最大であるなど、日本がハリウッドを支えている構図も見えてくる。