リストカット、摂食障害、薬物・セックス依存、境界性人格障害、と帯にある。二十歳で自死した少女を説明するありふれたキャッチコピーだ。でも、読まずにはいられなかった。書き手が「揺すられる」対象に会った瞬間、ノンフィクションは生まれる。
抗うつ剤の取材で知り合ったレイカは大江健三郎を読破し、ビョークを聴く感度の鋭い十六歳。二人はときに取材を逸脱し、友だちのようにつき合う。でもレイカは著者の取材者としての計算を見透かしていた。著者があるライブに誘った直後に連絡を断(た)つのだ。結局なにもわかってないね、とでもいうように。
著者は告白する。彼女の才能に嫉妬(しっと)し、肝心のところで踏み込めなかった。だからこそ死の理由を見極めたいと。そしてなんと、レイカを追い込んだ「悪者」探しの旅に出るのだ。それは、普通に自分を好きになりたいだけと語った彼女の真意から隔たる旅なのだが、支離滅裂に見える著者自身が晒(さら)されることで二人の間の不協和音がいっそう際立ち、私は最後まで目を離せなかった。
取材者の地軸が狂う。個と個が鈍く捻(ねじ)れる。狂いと捻れが逆説的に生々しくレイカの残像を結ばせ、消し去った。