女優ジェーン・フォンダ、68歳。アカデミー主演女優賞を2回受賞。新しいエクササイズ法「ワークアウト」を開発した事業家でもあり、反戦運動や青少年運動などを行う社会活動家でもある。私生活では、3度の結婚、離婚を繰り返しふたりの子どもの母親。
公式プロフィールだけを見るとまさに「完璧(かんぺき)な女性」だ。その人の自伝と言われれば、私でなくとも「前向き思考と強烈な自己肯定」ということばを連想するのではないか。しかし、ジェーン・フォンダという人はそうではないようだ。
彼女の70年近い人生の半分近くは、繰り返される過食症の恐怖と劣等感で占められる。女優として大成功を収め40歳を迎えても、彼女はまだ周期的に過食し嘔吐(おうと)していた。家族を持ち、映画に出て、社会活動に熱中しながら過食に苦しんでいる自らの状態を著者は、詩人のことばを借りて「第三眼瞼(がんけん)というベールがおりている」と表現しながらこう分析する。「私の摂食障害は完璧という不可能を求めていたことの裏返しで、食べ物を体に『入れる』ことで自分の中の空虚を埋めようとしていたのだ」
この分析そのものは精神科医顔負けの正確さだが、問題は彼女ほどの成功者がなぜ、自分の中に埋めなければならないほどの空虚を抱えなければならなかったということだ。
もちろん母親の自殺、映画スターである父親の薄情など、空虚の原因と思われるものはいくつもある。しかし、それを補って余りあるほどのものを彼女は自分自身の才能と努力で手に入れているはずなのだ。
何でも持っている。それでもまだ「空虚」が残っている。完璧を目指すことをやめたいが、立ち止まる自分を許すことはできない。ジェーン・フォンダと同じ女性はいま大勢いる。70歳に近づいてもなお、「しっかりと自覚して生きたい」と宣言しようとする彼女のような女性を生み、そして栄光と苦悩を与え続ける社会、それがアメリカということなのだろうか。
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石川順子訳/Jane Fonda 37年生まれ。米国の女優。