ミースやコルビュジエら巨匠の名と共に輝いたモダニズム建築、それを批判して登場したポストモダンの潮流。それさえも忘れられがちな今、近代を冷静に振り返り、モダニズム建築史を書き換えることが必要だ。
それに挑む著者は言う。影響力の強い近代建築史の名著は全(すべ)てモダニズム革命の強調のため、扱う対象を絞り単純化してイズム(主義)を打ち立てた。巨匠のみが神話化され、多くの有力な建築家が埋もれた、と。
本書はそんな偏った解釈を脱し、多様な形で創造性を発揮した建築家、メンデルゾーン、タウト、シャローン等の仕事を掘り起こす。手法はナラティブ(物語的)なもの。作品を敷地、風土と周辺の歴史的文脈、場所性等の視点から丹念に読み解く語りは豊かだ。
モダニズム建築の醍醐(だいご)味は、「形態は機能に従う」等の単純理論では分からないこと。モダニスト誰もが伝統教育を経験し、作品の様々な次元にそれが現れていることが示される。普遍性を追求し抽象空間を目指したミース、グロピウスと、特殊な解を求め場所と対話する空間を目指したシャローンらの対比を論ずる著者の筆は冴(さ)えている。問題を投げ掛ける刺激的な書だ。
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中村敏男訳