最後の謝辞(“あの頃、たくさんの涙と笑いをお茶の間に届けてくれたテレビドラマへ”)にあるように、往年のホームドラマに捧(ささ)げられた小説である。ここには“たくさん”はないものの、気持ちのいい涙と愉(たの)しい笑いがある。
小説の舞台は、築70年にもなる日本家屋の古本屋「東京バンドワゴン」。明治から続く古本屋で、現在の店主は3代目の堀田勘一、79歳だが、いまだに現役である。
堀田家は大家族で、長男我南人(がなと)(60歳。伝説のロッカー)、我南人の長女藍子(あいこ)(35歳。未婚の母)と娘の花陽(かよ)(12歳)、長男紺(34歳。ライター)と妻の亜美(34歳。元スチュワーデス)と息子の研人(けんと)(10歳)、そして我南人の愛人の子である青の8人。勘一と我南人の妻は病死しているが、物語の語り手は2年前に亡くなった勘一の妻サチで、空の上から家族が直面する事件の行く末を見守るという形である。
事件といっても、百科事典が現れては消えたり、老人ホームからおばあちゃんが失踪(しっそう)したりと大騒ぎする内容ではない。しかしホームドラマは、大騒ぎすることのない事件に過剰に反応し、ありえない設定からありえない展開になるのが常道。本書も、作りすぎじゃないかと思いつつも目が離せず、節々で笑い、温かな人情にほろりとする。ホームドラマがもつ憎らしいまでの手練手管を、作者はもっているのである。
もちろんその“作りすぎ”はご都合主義と、“憎らしさ”はあざとさと紙一重。でもそう見えないのは、物語の根底に我南人がいう“LOVE”があるからだろう。久世光彦演出のホームドラマなら家族が激しく喧嘩(けんか)することで確認した絆(きずな)だが、小説では心理を台詞(せりふ)で説明する必要はない。すでに訳ありの四世代家族が同じ屋根の下で暮らす以上、心の内を秘めていることが多く、それらが事件によって静かに語られ、微笑(ほほえ)みつつ了解していくのである。
ともかく最高の家族小説である。作者が謝辞を表すドラマが連続ホームドラマだったように、ぜひシリーズ化されんことを切に望みたい。
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しょうじ・ゆきや 61年北海道生まれ。第29回メフィスト賞を受賞しデビュー。