■当事者の思い、子育ての悩み
学童のいる家の方なら、気づいておられるだろう。フィリピン人を親に持つ子供が身近に増えているという状況に。
ところが、その内実となると、ほとんど知られていない。日比国際結婚の背景から当事者たちの思いや子育ての悩みに至るまで、きちんと調べて報告したのは、本書が初めてではないか。
著者たち自身が、日本人男性とフィリピン人女性の研究者夫婦である。その強みをいかんなく発揮して、日本人側とフィリピン人側の双方から多彩な声とデータを集めることに成功している。それらの共通項をひとつだけあげるとすれば、フィリピン人(大半が女性)に対するステレオタイプのまなざしから脱しようと苦闘してきた点だ。
日本人と結婚して日本に定住したフィリピン人女性は、陽気でしたたかな“ジャパゆき”でも、家を守る従順な“農村花嫁”でもない。私たちと同じく、日本社会で堅実に働き、ささやかな幸せを願う人々なのである。
ただし、家族第一主義は日本人よりはるかに強い。フィリピンの路上に倒れていても、見知らぬ誰かが助けてくれるという本書の記述に、かの国の人々の魅力が端的に表されている。