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[掲載]2006年07月23日[評者]角田光代(作家)
舞台は第二次世界大戦がはじまる直前のカリフォルニア。主人公の少女スミコは事故で両親を亡くし、弟タクタクと、花農家を営む親戚(しんせき)の家に引き取られている。やがて日本が真珠湾を攻撃し、スミコたち「ニッケイ」は、収容所での生活を強いられる。題材は決して明るくはないのだが、この小説には一貫して、すこんと抜けた青空のようなすがすがしさがある。
アメリカにおける戦時下の日系人が描かれているのも興味深かった。祖国を知らない少女の目を通して、複雑な立場を余儀なくされた日系人たちの姿が見えてくる。彼らは収容所の庭に緑を植え花を咲かせる。スミコはこの場所ではじめて友だちを得る。得たものと失うものをつねに箇条書(かじょうが)きにしながら、まるで蝋燭(ろうそく)の火に手をかざすようにして、スミコは未来という希望を守り続ける。
この著者の前作「きらきら」も、病気や貧困という題材を扱いながら、やはり澄んだ清冽(せいれつ)さがあった。それは、与えられた運命のなかで人がいかに未来を獲得するかを、著者が描こうとしているからだ。どんな状況であっても、人は自分の未来を得ることができる。そうすることで人は、運命の過酷さから解放される。
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