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書評

秋の四重奏 [著]バーバラ・ピム

[掲載]2006年07月30日
[評者]小池昌代(詩人)

■孤独な老い描いてしみじみ

 70年代のイギリス、ロンドン。とある部署に、定年を控えた4人の男女がいる。みな一人暮らし。4人はいわゆる「同僚」である。ランチタイムはばらばらにすごし、諍(いさか)いこそしないが、内心では互いを、辛辣(しんらつ)な目で見ている。

 そんな彼らも、誰かが人生の重大な局面に対すれば、何をおいても(あるいはやれやれという風情で)、結集する。

 気難しいマーシャが退職したあと、心身を狂わせ、やがて死に至ったときも、葬儀に集ったのはその同僚。肉親でも親友でもない。元々そんなものは彼女にはいないのだが、いたとしたってあてにならない。いないと考えたほうがいいものなのだ。

 死ぬときは一人。だからこそ、人と人は繋(つな)がるのだが、繋がることをマーシャのように拒否した場合ですら、人はその人のところへいく。それが生きる者の総意であるというように。

 ここには老いつつある極めて孤独な人間たちが、それぞれの領域を決して冒すことなく、許されるぎりぎりまで近寄って、共に生きようとする姿がある。

 再評価で蘇(よみがえ)った作家だという。燠火(おきび)のような余韻が長く残る。こんな小説を待っていた。

    ◇

小野寺健 訳


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関連情報

    書籍詳細

    表紙画像

    秋の四重奏

    • 著者: バーバラ ピム
    • 出版社: みすず書房
    • ISBN: 4622072165
    • 価格: ¥ 2,940

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