■孤独な老い描いてしみじみ
70年代のイギリス、ロンドン。とある部署に、定年を控えた4人の男女がいる。みな一人暮らし。4人はいわゆる「同僚」である。ランチタイムはばらばらにすごし、諍(いさか)いこそしないが、内心では互いを、辛辣(しんらつ)な目で見ている。
そんな彼らも、誰かが人生の重大な局面に対すれば、何をおいても(あるいはやれやれという風情で)、結集する。
気難しいマーシャが退職したあと、心身を狂わせ、やがて死に至ったときも、葬儀に集ったのはその同僚。肉親でも親友でもない。元々そんなものは彼女にはいないのだが、いたとしたってあてにならない。いないと考えたほうがいいものなのだ。
死ぬときは一人。だからこそ、人と人は繋(つな)がるのだが、繋がることをマーシャのように拒否した場合ですら、人はその人のところへいく。それが生きる者の総意であるというように。
ここには老いつつある極めて孤独な人間たちが、それぞれの領域を決して冒すことなく、許されるぎりぎりまで近寄って、共に生きようとする姿がある。
再評価で蘇(よみがえ)った作家だという。燠火(おきび)のような余韻が長く残る。こんな小説を待っていた。
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小野寺健 訳