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書評

ブリュージュ [著]河原温

[掲載]2006年07月30日
[評者]陣内秀信(法政大学教授・建築史)

■交易と文化の街の歴史と魅力

 水の街は美しい。「北方のヴェネツィア」と呼ばれるブリュージュもその一つ。各地との交易で中世から繁栄し、高い文化を誇ったフランドルの水都の歴史と魅力を本書は見事に描く。都市史を専門とする歴史家の面目躍如たる本だ。都市の形態や構造まで深く立ち入り、文献史料のみか実際の運河、広場・街路、建築を通して水都の歴史を語る。16世紀の詳細な鳥瞰図(ちょうかんず)は街歩きを倍楽しくさせる。

 外国商人が大勢集った中世ブリュージュの国際性と求心性は凄(すご)い。現在、EUの中心がベルギーにあるのも頷(うなず)けよう。特に同時代のイタリア都市との深い交流、社会の類似性の洞察は、著者の得意とするところ。街に残るジェノヴァ人やヴェネツィア人の足跡には目を奪われる。

 宗教色が強い中世でも、この先進都市では、世俗公共建築が沢山(たくさん)つくられたし、宗教画の背後には、都市の景観や人々の生活の日常性が豊かに描かれたのだ。

 著者は支配者から貧民まで、都市社会の特質を示す諸断面に歴史家の鋭いまなざしを向ける。君主の栄光を賛(たた)える華麗な祝祭や宮廷文化を担う画家の活躍を描く一方、貧窮者の救済のための施療院、公営質屋の制度を論ずる。都市史研究の面白さが味わえる好著だ。


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    書籍詳細

    表紙画像

    ブリュージュ—フランドルの輝ける宝石

    • 著者: 河原 温
    • 出版社: 中央公論新社
    • ISBN: 4121018486
    • 価格: ¥ 903

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