■「米兵の視点」での深刻さには違和感
現代の戦争における民間軍事企業の役割を指摘した話題作、『戦争請負会社』の著者による、最新作。本書では、昨今の戦争での未成年戦闘員の問題を取り上げる。
アジアやアフリカ、中東や中南米で、政府側もゲリラ側も、安価で「使い捨て」できる子どもたちを、拉致したり誘拐したり唆したりして、戦闘を長期化させている、と著者は論ずる。元子ども兵の証言は、どれも暗澹(あんたん)たる気持ちにさせられる内容だ。
著者は、子ども兵増加の理由をこう述べる。子どもにも使える小火器が世界的に普及したこと。冷戦後国内秩序を維持できない破綻(はたん)国家が増え、内戦が蔓延(まんえん)したこと。貧しい子どもたちは特に絶望感が強いこと。友人や家族を殺されたことで、生き残った自分への自責の念と復讐(ふくしゅう)心を強く抱くこと。戦うしか技能を持たない子どもが、戦うことを生業にするしかない環境におかれること。そして、そうした環境にある子どもを利用し戦いの道具にする組織が、至る所に存在するということ。
子ども兵問題の深刻さ、解決必要性が伝わってくるが、しかし、読み進むうちに違和感を覚える。本書の立ち位置が、子ども兵に向き合う外国軍、特に米兵の視点になっているのだ。子ども兵にどう向かい合うかに焦点が当てられ、子ども兵を生む途上国の問題、国際政治の矛盾への追究は途中で消えてしまう。
大人相手なら遠慮なく殺せるのに、殺すことに良心の呵責(かしゃく)を感じる子ども兵といかに戦わないですませるか、という問題であってはならないはずだ。国際社会の暗黙の了解のもとに、ふんだんに武器と大人の兵士を揃(そろ)えた侵略者や独裁者に対して、抑圧される側では子どもすら武器を取らざるを得ないという問題には、解決策は示されない。
子ども兵の訓練過程で、敵の命の安さ、殺すことへの鈍感さが教えられる、と著者は言う。それは実際には、世界に高価な命と安価な命がある、という現実を浮き彫りにしている。子ども兵は、国際社会のなかで一番安く、鈍感に殺されてきた社会層から生まれているのだ。
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小林由香里 訳/CHILDREN AT WAR/P.W.Singer ブルッキングズ研究所の上級研究員で、米軍顧問。