■過去の震災教訓に心構え伝授
欧米に比べ日本のマンションの歴史は短いが、今その数は急速に増えている。しかも日本は世界有数の災害国。来るべき大地震にどう備えるべきか。もし地震で壊れたらどうするか。姉歯元建築士の構造強度偽装事件で不安が広がる中、安心への心構えを伝授してくれる有り難い本が出た。
著者は、マンション保全コンサルタントとして長年の実績をもつ工学博士。我が国の度重なる地震の苦い経験を糧に、マンションの安全性がいかに高められてきたかを平易に説く。だが同時に、構造的には安全なはずの新しいマンションにも、玄関ドアが開かなくなる閉じ込め事故、電気・ガス・水道の停止等、多くの危険があると警告する。
本書の価値は、11年前の阪神・淡路大震災の被災状況と復興の紆余曲折(うよきょくせつ)を徹底検証した生々しさにある。その教訓として著者がこだわり批判するのは、補修すれば十分に住み継げるのに、建て替えを選択したマンションが多かった点だ。建て替えのみに公的支援をする行政の姿勢や社会風潮を問題視している。被害を最小限に抑えるにも、復興を円滑に進めるにも、結局は人と人の繋(つな)がり、コミュニティの日頃の活動が大切だというのが著者の思いだ。