■昭和末という時代のにおい
美空ひばり、手塚治虫、中上健次、現役では長嶋茂雄、井上陽水、ビートたけし……。この豪華絢爛(けんらん)たる顔ぶれを相手に、一人のノンフィクション作家が週刊誌上で行った対談が、二十余年後に一冊となった。いままで刊行されなかったのが不思議だが、タイムラグの分、昭和末という時代のにおいが伝わってくる。
おととし亡くなった著者は、野球に譬(たと)えれば、狙い球を絞って打つ強打者であった。だから、つぼにはまれば素晴らしい打球を放つ。
独断を承知で言うと、出色は“ショーケン”こと萩原健一の回。たとえば、かつての不良仲間に“ダイケン”と“チュウケン”がおり、二人は在日朝鮮人で、彼らに何度も助けられたと打ち明けるところ。萩原の、
「ボクらは河原乞食(かわらこじき)ですよ」
という言葉に、著者が、
「陰歩いてる特権もあるんだよね」
と応じるところ。朝鮮からの引き揚げ者だった出自に終生こだわりつづけた著者だからこそ交わせた対話である。
著者と話すと、誰でも自分の中の“無頼”の血が騒ぐ。長嶋茂雄でさえそうなのだ。本書を貫くのは、この何ものにもまつろわぬ“不逞(ふてい)”の精神である。