■悪酔い誘う男と女の深い闇
『九月が永遠に続けば』で第五回ホラーサスペンス大賞を受賞した沼田まほかるの第二作。相変わらず鳥肌たつほどの不気味さで気色悪い。でも面白い。
三十三歳の十和子は、八年も前に別れた黒崎のことが忘れられなかった。ふとしたきっかけで、自信過剰タイプの中年男の陣治と関係をもつようになり、生活をともにするようになるが、ある日、陣治の部屋から黒崎からもらったピアスを発見する。いったいなぜここにあるのか?
こうして男と女の関係の深い闇が静かにあきらかになっていくのだが、読者はいつしか悪酔いしたような気分になる。目に見えるものがすべて歪(ゆが)み、しかもたえず揺れていて、いつしか悪臭がしてくる。精神の腐臭ともいうべき妄執と破壊と狂気のイメージが重なり、深く捉(とら)えられて身動きできなくなるからだ。逃れたい。一刻も早く立ち去りたくなるけれど、とことん最後まで覗(のぞ)きたくなる。
おそらく途中で真相に気づくだろう。それでもおりられない。どこまでも暗く重く異常で、どこまでもリアルで切迫しているからだ。救いのなさが逆に絵になる、とびきりの絶望の物語。異様に明るい関西弁が狂気を研いでいて、怖い。