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[掲載]2006年12月10日[評者]最相葉月(ノンフィクションライター)
文化大革命期、中国当局による外国人記者や商社員の逮捕監禁が相次いだ。68年、身に覚えのないスパイ容疑で5年2カ月監禁された商社兼松の鈴木正信もその一人。本書は満州に生まれ、終戦直後は人民解放軍軍医助手として従軍した経験をもつ鈴木の生涯を香取が取材、共に書き上げたノンフィクションである。
国交がないのを理由に日本政府も外務省も積極的に鈴木の救出交渉を行わず、メディアも無関心。日中貿易に携わる他の「お墨付き」商社は個人の問題として無視した。夏至以外は光の射(さ)さない独房で厳しい取り調べに耐える日々。精神に破綻(はたん)をきたしてもおかしくないのに、差し入れの新聞が増えたり取調官の口調が優しくなったりすることに世界情勢の変化を感じとる冷静な判断力を持ち得たのは、二つの国の間で「個」として踏ん張るしかない人生を生きてきたためか。国交回復後、皮肉にもそんな鈴木が対中ODA第一号の病院建設の功労者となるのだ。
中国共産党は文革が誤りだったと総括、自己批判した。だが当時、文革を支持した日本の組織や団体がこれを真摯(しんし)に検証しただろうか。強い怒りと愛憎相半ばする中国への思いが全編を貫く。
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