(1)いのちの始まりの生命倫理—受精卵・クローン胚の作成・利用は認められるか(島薗進著)
(2)死ぬ権利—カレン・クインラン事件と生命倫理の転回(香川知晶著)
(3)スローフードな日本!(島村菜津著)
脳死臨調が「生命の終わり」について討議したとすれば、クローン羊誕生以降行われたクローンやES細胞などヒト胚(はい)の作成と使用をめぐる審議は、「生命の始まり」と科学技術に焦点をあてた日本初の議論となるはずだった。(1)は、生命倫理専門調査会の委員として審議に携わった宗教学者による報告書。「挫折」と評された調査会が置き去りにしたものを検証する。
(2)は、人工呼吸器装着の是非をめぐって争われた世界的に有名な「カレン」裁判の経緯と米国の生命倫理の展開を追う。死を権利として主張せねばならない社会の歪(いびつ)さを思う。早急に向き合わねばならない課題。
(3)は、日本にスローフード運動を紹介した著者が、食生活を立て直すべく努力する国内の農の現場を取材した力作。水俣で「地元学」を創始した吉本哲郎氏の「農家っちゃ、何ね」という問いにドキリとする。
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最相葉月 7月に東北大学加齢医学研究所で「生命科学に言葉はあるか」講演。来年3月に刊行する評伝『星新一』の執筆。