(1)母の声、川の匂(にお)い—ある幼時と未生以前をめぐる断想(川田順造著)
(2)江戸の橋(鈴木理生著)
(3)壊れゆく景観—消えてゆく日本の名所(川村晃生・浅見和彦著)
近頃、「水の都市」に関心をもっている。その立場から、異なる研究領域の刺激的な3冊を。
(1)は、東京・深川生まれの文化人類学者が、パリ留学、長いアフリカでの調査研究の後に故郷を再発見し、思いを込めて叙述した水の町の場所論、文化論。記憶をつむぎ、自分史と重ね、下町とは何かを深層から問う筆致は文学にも近い。
(2)は、名著『江戸の川・東京の川』の著者が橋について歴史の立場から徹底検証。埋め立て、水路整備、架橋の関係を論じ、橋の構造、材料、施工、維持管理を詳細に示して、水都建設の実態解明に新たな光を当てた。
(3)は、文学の立場から海浜や川等の名所に注目。古典に謳(うた)われた多数の歌を通して風景の価値と日本人の美意識を論ずる。同時に、その豊かな資産を経済と技術の力で破壊する現状を鋭く批判。筆に力がこもる。
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陣内秀信 江戸東京博物館で「東京エコシティ」展を開催、講演とカタログ監修も。イタリア・パルマ市から「水の書物」国際賞を受賞。