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書評

江戸時代のロビンソン [著]岩尾龍太郎

[掲載]2007年01月07日
[評者]陣内秀信(法政大学教授・建築史)

■忘れられた?日本人漂流者

 四周を海に囲われているのに、日本人の気持ちは案外、海に開いていない。海辺の風景は破壊に晒(さら)され、海洋レジャーも未発達。それに不満な著者は、江戸時代に多く存在した漂流を通じて、日本人と海のダイナミックな関係を掘り起こす。

 日本にも、ロビンソン・クルーソーさながらに孤島で生き残りに成功し帰郷した漂流者が多い。だが鎖国政策の幕藩体制の下、その情報は封印され、陸の論理を強めた近代には忘れられたという。帆柱一本の千石船しか許されない江戸時代。沿岸航法に頼ったが、嵐が来れば漂流に繋(つな)がった。しかも和船は頑丈で長期漂流に耐えたから、日本に漂流記の類(たぐい)が多いというのだ。

 南海の孤島、鳥島がまずその舞台。三つの漂着事例を読むと、水と火の調達、魚釣りの工夫、アホウドリを食料ばかりか衣服の材料にしたサバイバル精神に驚かされる。他の漂流船の残骸(ざんがい)で船を建造し、帰還した話も凄(すご)い。北方のアリューシャン列島、東南アジアの島でのサバイバルでは、欧米やロシア、中国の船に救出され、列強の思惑に振り回された和製ロビンソンが少なくない。

 海の論理の復権とサバイバル力の再評価を説く文明批判の書でもある。


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関連情報

    書籍詳細

    表紙画像

    江戸時代のロビンソン—七つの漂流譚

    • 著者: 岩尾 竜太郎
    • 出版社: 弦書房
    • 価格: ¥ 1,995

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