■市民的まちづくりの実践記
自治体の「まちづくり」のチャンピオンと言えば、誰もが横浜を挙げるだろう。
その最大の立役者は、革新市長、飛鳥田一雄の下で大活躍した辣腕(らつわん)の都市プランナー、田村明だった。40年近く前、横浜市に招かれ、まちづくりの現場で闘い続けた軌跡を自ら振り返った本書は、迫力に満ちている。
すべてが初めて尽くしだった。従来の中央官庁の顔色ばかりを窺(うかが)い、全国一律の法律、制度に従うだけの無策の都市行政を見事に反転させたのだ。「市民の政府」をめざす闘いだった。
官製の都市計画ではなく、ソフトも含めた柔軟で市民的なまちづくりの可能性を横浜が示してくれたのだ。横浜らしい戦略プロジェクトを次々に構想した田村は、権威主義の中央官庁や開発利益を求める企業と真っ向から闘い、柔軟な知恵と巧みな技で多くの成果を勝ち得た。抜群の記憶力により実名入りで再現される歴史のドラマの数々は、ノンフィクション作品を読む醍醐味(だいごみ)をも感じさせる。
みなとみらい、元町商店街等、人気の場を実現する一方、横浜市は乱開発から緑を守り、都市農業を創設し、環境保全でも常に先進的だったのがよくわかる。
地方自治とまちづくりを考えるための必読書だ。