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書評

境界知のダイナミズム [著]瀬名秀明・橋本敬・梅田聡

[掲載]2007年03月04日
[評者]巽孝之(慶應大学教授・アメリカ文学)

■常識より違和感を武器に

 「境界知」とは、著者たちが編み出した新概念だ。

 たとえば、誰しも自分と世界のズレを感じたことがあるだろう。だが年齢を重ね経験を積むにつれ、誰しも自分のほうを世界に合わせていく「常識(コモンセンス)」を覚える。だが古代ギリシャで「共通感覚(センススコムーニス)」といえば、五感の統合を意味した。いまこそ、そうした古典的な「共通知」を回復し革新的な「境界知」を模索すべき時だ、と本書は訴える。

 「境界知」とは、たんに異文化への「違和感」を克服していくだけではなく、むしろ違和感を居心地の悪さのまま刻々と操り、社会を生き抜いていくための知能である。ここではそれが、たとえば左利きが右利き中心に設定されている社会へ感じるバリアといったごくわかりやすいエピソードから、幼年期を抜けて魅惑的な冒険をくぐり抜けていくときに乗り越えなければならない一線や、人間型ロボットが人間に酷似すればするほど生じてくる不気味さの感覚まで、多様に例証される。

 「ふつう」になじむために違和感を抑えるのではなく、むしろ違和感を育む境界知を武器にして「ふつう」のほうを造り替えてしまうこと――知性の未来をめぐる最先端リポートは、「考えるヒント」満載だ。

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