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書評

東京アンダーナイト [著]山本信太郎

[掲載]2007年03月11日
[評者]香山リカ(精神科医、帝塚山学院大学教授)

■有名ナイトクラブの光と闇

 夜の世界には疎い私でも、ニューラテンクォーターは知っている。昭和の時代に東京・赤坂で栄華を極めたナイトクラブの名前である。いまだ見ぬこの妖(あや)しくもエネルギッシュな“おとなの世界”で力道山が刺されて死去した、というニュースは、幼児の私にも強烈な印象を残した。

 「昭和の華やぎの象徴」と「惨劇の舞台」というふたつの顔を持つニューラテンクォーター。このクラブの数奇な歴史が立ち上げから閉店までを見守った経営者によってつづられた本書が、面白くないわけはない。しかも著者は、力道山が暴力団の男性にナイフで刺されるその瞬間のほぼ唯一の目撃者だ。トイレから出てきた力道山が鉢合わせした男の胸を突き、組み合ったふたりが離れたとき、男の手にはナイフが光っていたという。四十年以上前の一夜が、高度成長まっただ中の日本の風景とともに鮮やかによみがえる。

 ショーのために来日した大物ミュージシャン列伝の章も興味深いのだが、児玉誉士夫や横井英樹との関係がつづられたダークな部分もまた、この店と日本の否定しがたい一面。それにしても、この店に心血を注ぎ、いま「さらば昭和」と決別しようとする著者の潔さよ。

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