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書評

イタリア12小都市物語 [著]小川熙

[掲載]2007年03月18日
[評者]陣内秀信(法政大学教授・建築史)

■過去と現代が同居…豊かな重層性

 世界でも都市が最も輝くのはイタリアだ。本書はこの国に惚(ほ)れ込んだ美術史家が40年に及ぶ研究の成果をもとに、都市の魅力を通じてイタリアの文化史の神髄を描く。扱われる要素は多彩だ。絵画、彫刻などの美術に加え、建築、都市空間、演劇、音楽へと自在に広がり、イタリアの街の空気や暮らしの表情をも伝える。

 定番のローマ、フィレンツェ、ヴェネツィア、ミラノというビッグな都市を避けているのがよい。登場するのは、イタリアらしさを濃密に表現する中北部の12の中小都市だ。人口が最多で26万に過ぎないのに役者揃(ぞろ)いで、文化史に燦然(さんぜん)と輝くのだから凄(すご)い。

 本書は、これら12の都市を訪ねると、イタリア文化史の全体が頭に入るという巧みな仕掛けをもつ。古代エトルリアが見え隠れするペルージャに始まり、中世ではモザイクの輝きが美しいビザンティン美術のラヴェンナ、フランスに負けないロマネスクの美術・建築を誇るモーデナ等。次にルネサンスの文化メセナを展開したウルビーノ、マントヴァ、フェッラーラを訪ね、最後は近代を準備したパルマ、ベルガモで締めくくる。

 とはいえイタリアだけに、どの都市も古代に起源をもち、歴史が何層にも重なる。中世初期の異民族侵入の激動の後、自治都市(コムーネ)として繁栄した点が登場する都市の共通した特徴で、封建的圧政の続いた南イタリアとは一味違う。この複雑で分かりにくい各都市の中世の歴史が丁寧に紐解(ひもと)かれるのも嬉(うれ)しい。教会の宗教美術の見どころが詳細に語られる一方、世俗権力の象徴、市庁舎や市民広場の壮麗さも描かれる。

 そして12都市の過半は、中世都市の富の蓄積の上に、優れた君主を得て、ルネサンスの宮廷文化の輝きを獲得した。都市の繁栄は豊かな田園に支えられたというイタリアの特質も著者は見逃さない。

 古代エトルリアの城門を最新型の車が通り抜ける感動を語る著者は、過去と現代が見事に同居するイタリアに惚れている。世界遺産の都市も多いが、どれも今の街として格好よい。著者が説くイタリア都市の美学はそこにある。

    ◇

おがわ・ひろし 30年生まれ。元中部大教授。著書に『地中海美術の旅』。

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