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ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>BOOK>書評>[評者]渡辺政隆> 記事 書評 アダムの旅 Y染色体がたどった大いなる旅路 [著]スペンサー・ウェルズ[掲載]2007年03月18日 ■遺伝子からみた人類の歴史 生物としての人類の特徴というと、つい、自意識や言語、発明の才など、脳に重きを置きがちである。しかし、そのほかにも大きな特徴がある。地球上の隅々、さまざまな場所に進出していることと、それにもかかわらず、遺伝的にはきわめて一様だという点である。 えっ、人種の多様さは明らかではないかという声が聞こえてきそうだ。たしかに、人類は多様な環境に適応する過程で、さまざまな人種を生み出してきた。だが遺伝的に見ると、人種間の差はないに等しい。 なぜそうなのか。答(こたえ)は、歴史の新しさにある。人類の共通祖先は、20万年ほど前に東アフリカで誕生した。化石の証拠と、母親の卵子だけを通じて伝わるミトコンドリアの遺伝子がそう語る。いわく、われわれは、20万年前に生きていた、ごく少数の「イブ」に端を発している。 だが、男性だけに伝わるY染色体遺伝子のルーツをたどると、その時間はぐっと縮まり、5万年前に出アフリカを果たし世界に散った少数の「アダム」たちに行き着く。この5万年という時間では、遺伝的多様化が起こるには短すぎたのだ。 遺伝学が解き明かす壮大な物語を真摯(しんし)に語った好著である。
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