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書評

立法の制度と過程 [著]福元健太郎

[掲載]2007年03月25日
[評者]小林良彰(慶應大学教授・政治学)

■「衆議院のコピー」参議院に実証のメス

 「参議院は衆議院のカーボンコピー」とか「同じことを2度も議論するのは時間の無駄」といった参議院不要論が消えては浮かんでくる。本書の著者も、二院制擁護論が根拠とする前提は現実にそぐわない、と批判する。

 著者は、戦後、貴族院を参議院に衣替えする制度設計の際に、「シニアな人物(学識経験のある練達で厳正公平な人)」によって参議院を構成することで衆議院とは異なる視点に立とうとしたことに注目する。そして、歴代の衆参両院議員3250人の属性や審議ぶりを比較することで、設計通りに制度が動いているかどうかを検証している。

 本書によれば、「良識の府」「理性の府」とされた参議院議員のほうが、(1)年齢はシニアだが、(2)両院の党派別構成などの違いを考慮してもなお学歴は低く、(3)知的専門性も医師や大学教授出身は衆議院より多いが、法曹界出身は少なく、学識経験者が衆議院に比べて多いとは必ずしも言えない。また、同一法案の審査回数や修正などの審議においても衆参両院に大きな違いは見られず、現状では、衆議院とは異なる立場と視点が十分に示されているとは言えない、と結論づけている。

 今後の国会改革論議で参考となる豊富なデータを提供する労作であり、そのデータを基に実証的に分析して得た結論自体に異議は唱えないが、その解釈についてはいささか異論がある。

 例えば、著者は「二院制擁護論は、制度としての二院制が議員構成や法案審議の点で異なる政治過程をもたらすことを議論の前提にしている」とするが、果たしてそうか。議院内閣制では、立法府の多数派が行政府を構成し、一院制にすると権力が暴走する恐れがある。むしろ二院制は、権力の暴走防止を議論の出発点としているのではないか。

 衆参両院の間に、期待したような相違が見られないのであれば、両院議員の構成が異なるように、両院が現在採用している類似の選挙制度を改めるとか、衆議院と参議院で異なる審議方法を採用するといった国会改革こそ提唱すべきではないだろうか。

    ◇

 ふくもと・けんたろう 72年生まれ。東大法学部卒。学習院大助教授。日本政治専攻。

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