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書評

氷上の光と影 知られざるフィギュアスケート [著]田村明子

[掲載]2007年04月01日
[評者]久田恵(ノンフィクション作家)

■華麗な舞いを取り巻くドラマ描く

 日本のフィギュアスケート界が、いつのまにかすごいことになっている。

 この間は、世界選手権も開かれて、テレビをつけたら、トリノの荒川に続けとばかりに、安藤美姫や浅田真央、高橋大輔が氷上を舞い、感極まって泣いたりしていた。

 それにしても一段とコスチュームが華麗になった。観客席も埋め尽くされ、リンクのスポンサー広告もにぎやか。画面からも大きな投資がされている様子がみてとれた。

 そして、いずれの世界も同じだけれど、光が当たれば、影も濃くなる。昨年のフィギュア界は、スケート連盟会長の背任スキャンダルが浮上し、目下、表も裏も大きな注目度だ。

 本書はそんなさ中に書かれたフィギュアスケート・ノンフィクションで、著者は、日本のフィギュア界が低迷していた14年前から取材を続けてきたスポーツライターだ。

 取材の始まりは米国メディアを興奮させた、リレハンメル五輪直前のケリガン襲撃事件。さらに、ソルトレイクシティ五輪での判定疑惑から新採点法導入への道筋。現場に居合わせた著者ならではの確かさで、十数年間のこの世界の動きを丁寧に描写している。クールな筆致が心地よい本だ。

 読んで実感するのは、どの国もスター選手がひとり出現すれば、市場としての注目も浴び、一気に才能も集まってくるということ。光が当たっている時は、スキャンダルという影のドラマでさえ、人々の関心を支えることに貢献するのだ。

 目下、フィギュア界に注ぐ光は、米国、カナダをそれて、日本、中国、韓国へと、移動中だ。それに伴い、日本のスケーターたちには、金メダルコーチと呼ばれる国際的な一流コーチが集中、技術レベルも芸術センスも競い合って進化している模様。

 本著でも、テレビではフィギュアの本当のすごさは分からない、と強調されているが、スケーターたちの迫真の演技をナマで見るなら、今が、日本の旬の時か。この機を逃さず、一度は、リンクに行ってみたいと思った。

     ◇

 たむら・あきこ 米国在住のフリーライター。『知的な英語、好かれる英語』など。

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