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書評

郊外の社会学 [著]若林幹夫

[掲載]2007年04月15日
[評者]北田暁大(東京大学准教授・社会学)

■断罪せず、微妙な愛で理解

 メディア言論をみていると、郊外はあまり評判はよくない。均質性が子どもたちを窒息させ犯罪を誘発する、量販店が立ち並ぶ光景が歴史的景観を乱す――正直な話、郊外はバッシングにあっているのではないか、とすら思えてくる。

 しかし、本当にそうなのだろうか、郊外は郊外として固有のリアリティー・歴史性を生み出してきたのではないか。もしあなたがそのように思い、従来の郊外論に物足りなさ、あるいは苛立(いらだ)ちを感じているとしたら、本書はお薦めである。

 東京の最大級の郊外都市・町田に生まれ育ち、かつて筑波学園都市に通勤し、現在も東京東部の郊外都市に住む著者は、ときに私的な都市体験を織り込みつつ、郊外を断罪する立場にも、郊外を無条件に商品として肯定する立場にも与(くみ)することなく、郊外という場の微妙な位置を明らかにしていく。

 その筆致は基本的に社会学的な手続きを踏まえたクールなものだが、郊外に対する著者自身の「愛」が所々に滲(にじ)み出ている。その「愛」の複雑さに、郊外を理解する鍵があるように思える。肯定/否定の対立を越えて郊外を理解しなくてはならない、と思わせる一書である。

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