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書評

陸軍特攻・振武寮 [著]林えいだい

[掲載]2007年04月29日
[評者]赤澤史朗(立命館大学教授・日本近現代史)

■帰ってきた「生き神」さま

 一度出撃しながら、基地に引き返した陸軍特攻隊員の秘密の収容施設が、福岡に置かれた振武寮であった。振武寮に関する著者の取材は、昨年NHKの番組でも取り上げられた。出撃時には「生きている神」と讃(たた)えられた特攻隊員は、帰還後はあってはならない卑怯(ひきょう)者として隔離・虐待されることになる。負い目を感じて生き残った彼らが重たい口を開いたのは、その晩年になってからである。

 引き返した理由は、さまざまであった。搭乗する機体が古く整備不良で、目的地に着く前にトラブルを起こしたとか、中継基地が米軍の空襲を受けて搭乗機が破壊されたなどの原因も多かった。戻ってきた特攻隊員の数は、沖縄戦の中でどんどん増加していく。陸軍特攻を担当した第六航空軍は、この予想もしない事態にうろたえて、それを隊員個人の責任にしたのである。

 本書からすると、第六航空軍の幹部は徳之島の前線基地まで視察に赴き、特攻機がまともに飛べず、特攻作戦が破綻(はたん)している事実を知っていたと思われる。しかし今さら、特攻実施の決定を覆せないと考えていたようだ。今日にもある官僚的思考の無責任さを暴く、ドキュメンタリーともいえよう。

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