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ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>BOOK>書評>[評者]北田暁大> 記事 書評 自然主義の人権論―人間の本性に基づく規範 [著]内藤淳[掲載]2007年05月06日 ■特定の価値でなく事実を基に理論化 人権は、一般に、人が人間であるということによって持つ普遍的な権利であると考えられている。この「人権」という概念が、現代を生きる私たちにとって不可欠のものとなっていることは疑うべくもない。 しかし、「なぜ人権は正当化されうるのか」という基礎的な問いを考え始めると、私たちはとたんに議論の迷路に入り込んでしまうことになる。「人権というのは西欧の価値観を表したものにすぎない」という文化相対主義の立場からの批判もある。いったい人権はいかなる理論的根拠を持っているのだろうか。 この問いに答えを与えるべく、多くの法学者や哲学者たちが議論を積み重ねてきた。「理性的な存在たる人間の自律性」「行為主体としての人間目的志向的なあり方」――「人間であること」の普遍的な特徴を描き出し、それを元手に人権を正当化する様々な議論が提示されてきた。 しかしその多くは、特定の人間像を価値あるものとして前提にしており(価値論)、文化相対主義的な批判をクリアできていない。人権の普遍性を示そうとするならば、文化により違ってきてしまう価値観に依拠するのではなく、「人間に普遍的な要素を基盤とした理論構築」を目指さなくてはならない――そのように考える著者は、進化生物学の視点を積極的にとり入れ、人間に関する生物学的事実から人権を正当化しようと試みる。 著者が生物学の成果から引き出した人間の普遍は「人間は繁殖に向けて生きる」「人間は、『他の人間集団への対抗』を主原因として集団生活をする」の2点。そこから、段階的な考察を経て「社会権」的な要素をも含んだ人権概念の導出を図る。その論証を、著者は「『事実』に基づく人権の『脱―価値論』的な正当化」と呼ぶ。 「脱―価値論」的な論の運び方に違和を感じる人もいるかもしれない。しかし想定される批判に対する反批判も逐次提示されており、なかなか一筋縄ではいかない。冷静に熟読吟味してみたい一書である。 ◇ ないとう・あつし 68年生まれ。一橋大学国際共同研究センター非常勤研究員。
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