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ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>BOOK>書評>[評者]斎藤美奈子> 記事 書評 美術館の政治学 [著]暮沢剛巳[掲載]2007年05月20日 ■日本独自のあり方と歩み改めて認識 たまたま入った美術館で現代アートの企画展などに遭遇し、ふと感じる「しまった」という気分。著者いわく。 〈確かに「現代美術」の多くは一般的なポピュラリティに乏しく、また作品鑑賞にあたっては特有のリテラシーを求められる場合もあるため、ほとんどの場合観客動員数という面であまり期待を寄せられないことは否めない〉 おお、「現代文学」をめぐる状況とおんなじだっ! とはいえ当節は美術館の建設ラッシュである。国立新美術館、ミッドタウン内のサントリー美術館と、東京では新美術館のオープンが続いているし、地方都市も同様だ。箱モノ行政のツケに苦しむ自治体も少なくないのに、美術館に未来はあるの? 『美術館の政治学』は美術館のそんな最新事情と近代の美術館史をからめつつ、日本のミュージアムの現状と課題をさぐったミュゼオロジーの本、である。美術雑誌の連載が下敷きであるため、やや総花式の感はあり、タイトルに反して政治向きの生臭い話題は抑えられているものの、まさに美術館の回廊式に、興味深いトピックが次々に登場する。ミュージアムの原点ともいえる万博、柳宗悦と日本民芸館の思想、一時代の文化を築いたセゾン美術館……。 特におもしろかったのは、上野の東京国立博物館の成り立ちと、靖国神社の遊就館を中心とした戦史博物館の考察である。幕末の上野戦争の舞台で「敗者」の記憶を残す上野の山に東博が建てられたのと、九段下に内戦の「勝者」たる官軍を顕彰する遊就館がつくられたのは、ほぼ同じ時期。それから百数十年後のいま、上野は巨大なミュージアムパークに発展し、遊就館は敗戦国の戦史博物館としての矛盾と欺瞞(ぎまん)をかかえる。 日本のミュージアムは歴史が浅い。コレクションの厚みは何百年の伝統を誇るヨーロッパとは比較にならず、大英博物館やルーヴル美術館のように観光客の大半が訪れるミュージアムもない。それでも日本は日本なりのプロセスを歩んできた。美術館はメディアである。あの美術館にも、よし、足を運んでみよう。 ◇ くれさわ・たけみ 66年生まれ。評論家。著書に『「風景」という虚構』など。
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