|
ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>BOOK>書評>[評者]その他> 記事 書評 ハンニバル・ライジング 上・下 [著]トマス・ハリス[掲載]2007年05月20日 ■「悪の怪物」の生成史たどる 巨大な悪の怪物を生みだすものが、さらに巨大な悪だとすれば、それはやはり戦争ということなのか。 医学博士にして、底知れぬ教養を持つが、連続殺人鬼で、しかも文字通り「人を食う」。世界的ベストセラーで、映画も大ヒットした『羊たちの沈黙』(新潮文庫)、『ハンニバル』(同)などの連作で著者が育ててきたアンチヒーロー、ハンニバル・レクターが、いかに生成されたかの謎を明かす。 バルト3国の一つ、リトアニアの名家で何不足なく育つ聡明(そうめい)な少年、ハンニバルが、第2次大戦の末期、戦火の混乱の中で、最愛の妹までも悲惨な状況で殺され、孤児になる。その後、フランスに住む叔父に引き取られ医学生となった彼の、妹の死にまつわる壮絶な復讐(ふくしゅう)劇が物語の骨子。ナチズムともからみ、まずは納得させる。 興味深いのは、叔父の妻が紫という名の日本人で、彼は紫から日本の美学や武士道を学び、深く傾倒することだろう。その設定は一考に値する。ともあれ、公開中の同名の映画に比べ、活字の方がはるかに膨らみは大きい。特に映像では、洗練された日本の美学で統一されたはずの紫夫人の趣味が中国風にしか見えないのは、常ながら悲しい。
ここから広告です 広告終わり 書評 バックナンバー
|
ここから広告です 広告終わり 売れ筋ランキングコラム
|