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書評

『女性自身』が伝えたアメリカの戦争―ベトナムからイラクまで [編著]松田優・寺坂有美

[掲載]2007年06月10日
[評者]香山リカ(精神科医、帝塚山学院大学教授)

■卒論が本に、斬新な視点で女性誌分析

 本書は、女性週刊誌の老舗(しにせ)といえる『女性自身』に掲載された戦争報道ばかりを、144本集めて時系列で並べた資料集である。ここで「戦争」というのは、ベトナム戦争、湾岸戦争、そしてイラク戦争とアメリカが関(かか)わり、日本もその影響を受けた戦争のことである。

 え、あの芸能スキャンダルまみれの女性週刊誌に戦争報道が?と思った人は、このメディアに対して誤解していると思う。たしかに表紙はどぎついし、中を開けば芸能、占い、美容の記事が多いが、実は新聞や他の堅い雑誌にはあまりない生活者の視点からの読み物や報道記事も少なくない。また、それらはふだんは活字に触れる機会が少ない人たちにもよく読まれる、という特徴もある。

 ベトナム戦争に参加したいと志願する日本の若い男女をルポした「“ベトコン義勇軍”に集まった50人」など、個々の記事にも興味深いものが多いが、全編を通して見て初めてわかることも多い。たとえば現代は視覚優位の時代といわれるが、ベトナム戦争、湾岸戦争、イラク戦争の順で写真特集が減って、かわりに解説・問題提起の記事が増えている、というのもそのひとつ。もちろん、戦地での報道規制が厳しくなり写真が撮りづらくなったのもこの変遷の理由なのだろうが、それ以上に中東で何が起きているかをわかりやすく伝えたいという送り手、きちんと知りたいという受け手も増えているのでは、などと想像が膨らむ。

 女性週刊誌に対する既成概念にとらわれない編者の視点の新鮮さに驚かされるが、それもそのはず、本書はもともと大学生の卒業研究としてスタートしたものだそう。教員の協力もあったようだが、アイデアと意欲さえあればコネも経験もない学生でもここまでのことができる、というよいお手本だ。

 ただ、すべての記事は原稿化されていて写真はカットされているのが、ちょっと残念。著作権の問題などあるのだろうが、女性誌独特のあの扇情的なレイアウトでも見てみたかった。

    ◇

 同大文学部・松田優(まつだ・ゆう)の卒業論文に、非常勤講師・寺坂有美(てらさか・ゆみ)が協力、藤原聖子教授監修で出版。

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