[掲載]2007年6月10日
■子らと即興のやりとり再現
紙芝居は今では幼稚園などで先生が演じるもので、拍子木をたたいて子供たちを呼び集め街角で駄菓子を売りながら演じる、街頭紙芝居を思い浮かべる人は少ないだろう。著者は大阪で、今は数少ない街頭の紙芝居屋として活動し、紙芝居の歴史の研究者でもある人物だ。
街頭紙芝居が全盛期を迎えたのは1950年代半ばであったが、それはTVの普及によって急速に衰退したといわれる。ただ街頭紙芝居が消滅したのは、かつて遊ぶ子供たちの姿であふれかえっていた街角から、子供たちの姿が消え去ってしまったためだろう。
本書の中心は、かつて評判を取った街頭紙芝居のストーリーを紹介し、子供たちと演者との生き生きとした即興のやりとりを再現している点にある。著者の狙いは、街頭紙芝居の復活にあり、それを通してアナーキーな魅力と力を持つ子供たちの集う「街頭」をよみがえらせることにあるようだ。昔と変わらない子供の世界が、今でもあると、現役の紙芝居屋としての体験から、著者は信じている。同じ著者が街頭紙芝居の仕組みや歴史などを解説した『紙芝居がやってきた!』(河出書房新社)を、併せて読むこともお勧めしたい。
著者:鈴木 常勝
出版社:岩波書店 価格:¥ 882