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書評

人の痛みを感じる国家 [著]柳田邦男

[掲載]2007年06月10日
[評者]高橋伸彰(立命館大学教授・日本経済論)

■「他人の身に」貫くメッセージ

 患者と同じ痛みを経験したとき過酷な辛(つら)さを実感として理解できた、自分はこれまで患者の身になって痛みを想像したことはなかった――

 骨にまでがんが転移し、残された人生も長くはない50歳前の医師が語った言葉である。「脳天にまで達するような灼熱(しゃくねつ)感のある痛み」でも、他者(ひと)のものなら耐えられる。しかし、自分が襲われた場合には「一分間でも耐え難くなっている」と病床で著者に告白したという。

 その言葉が「心にずきんと突き刺さ」った著者は、「筑豊じん肺訴訟」や「水俣病関西訴訟」などの裁判で、被害者の苦しみに心を痛めることなく「行政の正当性を主張」する「官僚とは一体何者なのか」と問う。官僚の体質を変えるには一人ひとりに「意識の転換を求める」だけではなく、行政も組織として国民の立場に立った倫理を確立する必要があると著者は訴える。

 人の受ける痛みや苦しみは仕方がないものではなく、相互に顔が見え理解してくれる人がいれば和らぐものである。大切なのは他人の立場で考えることだ。それが本書を貫くメッセージであり、匿名の誹謗(ひぼう)中傷が横行するネット社会を過激なまでに著者が批判する理由もここにある。

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