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書評

江戸の温泉学 [著]松田忠徳

[掲載]2007年06月24日
[評者]四ノ原恒憲(編集委員)

■じわっと効く 大衆化の理由

 温泉ブームの中、タイトルにひかれ、手軽なガイド的効能を求めて、この本を手に取ってはいけない。温泉が一挙に大衆化した江戸時代の状況を丁寧に追っている。でも、読むほどに、頭脳に、じわっと効いてくる。主な含有成分は、メディア論と、医学史だ。

 温泉が人々の注目を集め始めたきっかけは、家康をはじめ、将軍家やそれにならった大名の熱海行きだった。熱海の湯を江戸に運ばせもした。その派手なパフォーマンスが、人々の注目を集め、熱海や箱根が大温泉地になってゆく。

 来年のサミット会場に決まった北海道のホテルが、その報道で、予約で埋まったことを思い起こす。

 また、当時、従来の東洋医学に批判的な医者たちが、新たな治療理論に取り組み、新しい西洋医学への道に結びついていく。その中心に温泉治療の研究があり、ついには成分分析にまでたどりついていた。彼らの発言や文書が広まり、名湯、有馬や城崎の人気が浮沈を繰り返す。初めに書いた2成分の融合が当時の温泉の意味を、浮上させる仕掛けだ。

 当時、3週間が温泉治療の基本単位とされた。今の医学でも妥当性をもつという。手軽さが、すべてではない。本も温泉も。

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