|
ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>BOOK>書評>[評者]その他> 記事 書評 花降り [著]道浦母都子[掲載]2007年07月01日 ■大人の純愛、描く歌物語 女性詩人だけではなく、女性の歌人も小説を書く。これは道浦母都子(もとこ)がはじめて描いた長編小説である。 二十三編の短章の冒頭に一首ずつ歌が引用され、物語と微妙に照応する仕組みも効果をあげている。 四十代の初めに夫を亡くし独身となった佐紀は、中学校の同窓会で再会した邦彦と、年賀状を介して約束し、年に一度、桜の名所を訪れている。かれは単身赴任で奈良の社宅に住み、佐紀は毎朝、マンションから生駒山(いこまやま)を眺めては、その日の吉兆を占う。中学二年で同級生だった邦彦こそ初恋びとで今も好きなのに、桜狩りの時だけが純粋な愛の時間だと佐紀はおもいこもうとしている――。 この設定からもわかるように、これは今どきの「泣ける」甘口小説とはちがうのだ。大人の女性が読むのにふさわしい恋愛小説ともいえようか。 甘口どころか大甘だ、と肉体派の訳知りはいうだろう。たしかに邦彦へ語りかける形式が、抒情(じょじょう)をやや過剰にしているし、佐紀の夢の描写にも問題がある。しかし、この作品は桜の美を中心に据えた、愛の歌物語なのだ。著者自身の巻末の一首「ただ一度この世を生きて自らのいのちと思う一人に会いぬ」という秀歌に昇華されてゆくまでの。 ここから広告です 広告終わり 書評 バックナンバー
|
ここから広告です 広告終わり 売れ筋ランキングコラム
|