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書評

木暮実千代―知られざるその素顔 [著]黒川鍾信

[掲載]2007年07月01日
[評者]前川佐重郎(歌人)

■親族が活写する女優人生

 木暮実千代。田中絹代や高峰三枝子らとともに日本映画のオールドファンには懐かしい美人女優の一人であるに違いない。

 映画はテレビの登場によって昭和33年をピークに斜陽化するが、いまDVDなどの発達でかつての日本映画も茶の間で盛んに見られているという。200本を超える作品に出演した木暮実千代の映画もそうらしい。

 本書は木暮実千代の甥(おい)である著者が、愛情を傾けつつも、戦前・戦中・戦後の叔母の女優人生を親族との葛藤(かっとう)もまじえつつズバズバと活写してゆく。

 昭和25年、監督・溝口健二の「雪夫人絵図」が封切られた。ところが当時は淫(みだ)らな作品としてすこぶる評判が悪かった。しかし主演の木暮は「きれいだった」と褒められて上機嫌だったという。

 また、どの映画に出演するかなど、見えざるところで火花を散らした最大のライバル、高峰三枝子と、いつの間にか心が通い合うようになったりもする。

 木暮は平成2年に死ぬが、今年、「文芸春秋」企画の「昭和の美女ベスト50」には名前がなかった。著者は「完全に“老兵”になって消えてしまった」と、現実を淡々と書く。木暮実千代が親しみをもって近づいてくる一冊である。

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