[掲載]2007年7月8日
■市場原理が生んだ「心の病」
今や教育現場にまで導入されようとする勢いの市場原理。その柱ともいえる成果主義制度は、職場ではすっかりおなじみのものとなった。しかし最近、この制度の弊害も指摘され始めている。本書は、成果主義に精神医学からスポットをあてて、その負の側面を浮き彫りにしようとした意欲作。
精神科医から見た成果主義の弊害とは、この制度が労働者に新たなストレスを与え、うつ病などの精神疾患や過労死を引き起こす、というものだ。長く臨床に携わる筆者は、「労働者のみならず産業医まで長時間労働を強いられる職場」「徹夜はあたりまえという環境の中でうつ病になったIT技術者」といった実例をあげながら、成果主義導入後の職場の実態を明らかにしていく。さらに、成果主義と「心の病」の因果関係をはっきりさせるため、考察を重ねる。
このあたり、一般の読者としては「成果主義は心に悪い、とはっきり言ってほしい」というところだと思うが、医学者である著者はあくまで感情的にではなく科学的視点でこの問題を解明したいのだろう。しかし、抑えた文体の後ろに流れているのは、経済効率ばかりを優先するいまの社会への怒りと労働者たちへの支援の熱い感情である。
著者:天笠 崇
出版社:新日本出版社 価格:¥ 1,680
ここから広告です
広告終わり