[掲載]2007年7月15日
■優れた景観が育む都市の美への意識
フランスの建築法規は「建築は文化の表現である。建築の創造、建築の質、これらを環境に調和させること、自然環境や都市景観あるいは文化遺産の尊重、これらは公益である」と定める。ユルバニスム(都市計画)という概念が広がる1920年代以前は大規模な都市開発にかかわる営為もアンベリスモン、すなわち美観の整備と総称していた。
いっぽう日本の建築基準法では「土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若(も)しくは壁を有するもの……」と規定する。建物の定義が違いすぎるのだ。建築行為は私権に属すると考える私たちの国では、「美」への配慮は乏しかった。ようやく2004年に景観法を制定し、現政権も「美しい国」をうたうが、そもそもの発想が異なる。
太陽・緑・空間を求める進歩的都市計画と、歴史の蓄積を審美的に評価する文化的都市計画の棲(す)み分けをはかりつつ、フランスの都市は今日の美観を維持するに至った。本書は20年の研究蓄積をもとに、フランスの都市計画と景観保全制度、屋外広告物や看板に関する厳格な規制、文化大臣にちなみマルロー法の愛称のある不動産修復事業などを分かりやすく紹介する。
著者は「すぐれた景観や環境は、すべてが調和して成り立っている。しかしこの調和も、景観を損なうたった一つの要因により失われることがある」と結論づける。一つひとつの材料、屋根や壁、街路、看板などすべてを整えないと全体の秩序は見えてこない。電線の地中化や高さ規制など、限定的で緩やかな規制にとどまりがちな、わが国の景観整備を暗に批判する。
では日本の現状をいかに改善するべきなのか。著者は優れた都市景観が教育的役割を果たすと説く。フランスでは幼年期に見た美観が、30年ほどを経過しても残っている場合が多い。美しい環境で育つことで市民も美の真価を理解できるというのだ。
「ジャンクな景観」に占拠され、数年で激変する大阪ミナミで生まれ育ったがゆえに、故郷喪失感に苛(さいな)まれている私には、耳に痛く、心に響く指摘である。
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わだ・ゆきのぶ 52年生まれ。足利工業大教授。共著に『フランスの住まいと集落』。
著者:和田 幸信
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著者:藤本 信義・和田 幸信・楠本 侑司
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