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書評

ブログ・オブ・ウォー [著]マシュー・カリアー・バーデン

[掲載]2007年07月15日
[評者]久田恵(ノンフィクション作家)

■米兵たちが書き込んだ「戦場の事実」

 イラク開戦から4年余。アメリカは、今なお自国の兵士を中東に送り続けている。

 当初、軍上層部は兵士の士気高揚に繋(つな)がればと、インターネットへのアクセスを無制限に認めていた。兵士たちは、ブログやウェブサイトに、大量の書き込みを続けた。

 本書は、そんな彼らの「生の声」を集めた本である。一兵卒から幹部兵まで、さまざまな任務や立場の兵士の体験が書き込まれている。

 イラクへ赴く兵士たちは、みな「テロとの闘い」に身を投じることは、「祖国アメリカのため」「イラクの人々のため」と書く。時には、自分は「正義」をなすために、神に遣わされるのだ、とまで。

 けれど、本国に居るかのように整ったベースキャンプを一歩出れば、そこは戦場だ。

 いつ自分が銃撃されるか。

 いつ爆弾で吹っ飛ぶか。

 兵士たちは、たちまち、自分が戦うのは「国のため」でも、「イラクのため」でも、「金のため」でも、「神のため」でもない、共に身を危険にさらしている仲間のためだと言い始める。

 「なぜなら、僕らはこのクソ溜(だ)めに一緒に放り込まれた仲間だから」

 銃撃戦で初めて人を殺した兵士は書く。「仕事なんだ、悪く思わないでくれ」「人殺しが僕の仕事だ」

 切羽詰まった兵士には、自国を戦場とされた人々の苦難と絶望を思いやるゆとりはない。

 本書を編んだマシュー・カリアー・バーデンは、元陸軍予備役少佐である。イラクで戦死した友人の「英雄的行為」が報じられなかったことに苛立(いらだ)ち、ならば、戦場の兵士、ひとりひとりの物語を伝えようとブログを開設したという。

 彼には、イラク戦争への批判も、反戦の意図もない。けれど、兵士によって綴(つづ)られる「戦場の事実」ほど、戦争というものの悲惨さ、不合理さ、その狂気を伝えるものはない。

 2005年、アメリカ軍は機密保持を理由に、兵士のブログの規制に乗り出した。

 このような本が、出版されることは、もう二度とないのかもしれない。

    ◇

 島田陽子訳/Matthew C. Burden ブログ「Blackfive」を開設。

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