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ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>BOOK>書評>[評者]酒井啓子> 記事 書評 ホメイニ師の賓客―イラン米大使館占拠事件と果てなき相克 上・下 [著]マーク・ボウデン[掲載]2007年07月22日 ■反米の潮流の原型となったギャップ 28年前、イラン革命の真っ最中に発生したテヘランでの米大使館占拠事件。その後現在まで続くイラン・米関係の決定的対立の原因であり、イラン革命がイスラーム色を強める契機となった、歴史的事件である。 その全容を、人質となった大使館員の視点から描いた本書を読むと、占拠に至るまでの米政権の無防備さ、読みの甘さにまず、驚く。大事には至らないだろうと思っているうちに、あれよあれよとイラン人学生たちが大使館に侵入する様。慌てて重要書類を端から廃棄する館員たち。なによりも、革命でイランから逃亡した国王をすんなり受け入れた当時のカーター政権の問題が、指摘される。この時まで米国はまだ、イラン新政権からそこまで反発されるとは思っておらず、イラン革命を歓迎すらしていた。 そして極めつきは、ずさんな人質救出作戦だ。米軍が送り込んだ救出部隊の航空機はイラン中央部の砂漠で砂嵐に遭い、戦いもせず炎上した。今の米国の、イラクでの立ち往生ぶりを彷彿(ほうふつ)とさせる。 本書は、15カ月近くもの間人質となった米大使館員へのインタビューに基づいた再現ドラマとして構成される。特に印象的なのは、「見張り」の学生たちとのやりとりから見えてくる、米・イラン間の認識のギャップだ。学生たちはひたすら、米国がイランに対して行ってきた陰謀と工作を暴こうとする。館員たちは、それをイラン人の根拠のない思い込みと考え、何で自分たちがこんな目に、と反発する。 このギャップは、その後埋まるどころか中東全域に広がり、反米の一大潮流を作り上げている。米国が中東をほしいままにしている、と反感を募らせる中東の人々に対して、その米国の出先機関の多くは、中東にほとんど関心もなく、深く食い込んでいるという自覚もない。相変わらず米国は、「発展途上国の敵意に慣れっこ」なままだ。ここに9・11やイラクでの反米の高まりの原型がある。 作者は、映画「ブラックホーク・ダウン」の原作者。本書も迫力ある映画になりそうだ。 ◇ GUESTS OF THE AYATOLLAH 伏見威蕃訳/Mark Bowden 米のノンフィクション作家。
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